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動物園の主流は動物の生態がよりよくわかる“行動展示”。行動展示における日本の元祖ともいえる「ライオンバス」を運行したのが多摩動物公園です。まして、冬は暑くないぶん動物たちがイキイキと行動しています。その様子を多摩動物公園に見に行きました!

ライオンバスは走らないものの、寒い日のライオンはノソリと歩いていた


もぐらのいえのパイプ。上から2本目のパイプ内にモグラがいる


タスマニアデビルは元気満々。走り回っているので撮影もひと苦労


ずいぶん前のことだが、おでかけマガジンの『動物大好き!お魚大好き!』のコーナーに、動物園は冬と夏の両方に行くとおもしろい…その理由は夏に元気のない動物は冬に元気で、冬に元気がない動物は夏に元気だと書かれていた。

動物園は気候がよく、天候のいい日に行きたい場所だ。小さい頃にソフトクリームを舐めながら、猿山を眺めていた記憶があるが、コートを着て動物園に行った覚えはない。

見学者は快適でも毛皮をまとった動物に太陽がギラギラする季節は暑過ぎるのだろう、ゴロゴロしているライオンや、寝こけているトラしか見ていないような気がする。

「元来、アフリカのような暑い場所に暮らしているじゃないか」というのはもっともな話だが、そこに棲む野生動物(とくに食肉目ネコ科)たちは狩り以外では大あくびでゴロりとしているし、暑い昼間を寝て過ごす種類も多い。

そこで、肌寒い日に動物園を訪ねてみることにした。さらに、行動展示の進化も体感してみたかったのだ。

選んだ先は首都圏の方がおでかけしやすい多摩動物公園。ライオンバスが人気だった動物園だ。

多摩動物公園でライオンバスの運行が始まったのは昭和39年、今から約50年も前のこと。初代園長の「野生に近い姿を見せたい」という思いを実現。バスに付けられた馬肉を食べに来るライオンの迫力ある姿が話題となり、一躍多摩動物公園の名は全国に広がった。

イスラム寺院を模した(なぜ、ライオンなのにイスラム寺院だったのだろう?)発着場の老朽化と耐震問題によってライオンバスは今年の3月をもって運休、具体的な再開日は発表されていない。

ライオンバスは世界初の試みで、その後のサファリパークや行動展示に繋がっているのは間違いないだろう。

北海道・旭山動物園の行動展示が話題になったのが大きな転機となり、全国の動物園で行動展示のための改修工事が行われつつある。見学者はより以上に動物園が楽しめるようになった。

ライオンバスを創始した多摩動物公園も負けていない。訪れた時も行動展示のための改修工事が行われていたし、オランウータンのための延々と空に続くスカイウォークも整備されている。

とくに、7年ほど前に公開されたという「もぐらのいえ」には驚かされた。

ペンギンが空を飛ぶのは旭山動物園だが、多摩動物公園ではモグラが頭上を走るのだ(ゆっくりだが)。

「光が当たると死ぬ」と小さい頃聞いた説が大間違いなのをここで知った。モグラは明るい室内に張り巡らされたパイプの中を、元気にもにょもにょ進むのであった。

チーターは歩くだけでサマになる動物の典型


アフリカ象は2頭で戯れていた


上部から見下ろすキリン。おもしろい表情が撮れた


訪れたのは晩秋の晴れた日だった。太陽が出ているとはいえ、行楽日和とはいえないような肌寒さ。

こんな日に、いったいどんな人たちが動物園に来るのだろうと思った。

動物園といえば、乳母車を押すファミリーが圧倒的に主役のイメージだ。

最初に見かけたのは正門前で記念写真に納まる幼稚園の遠足でやってきた幼児たちだった。4組ぐらいいるのだろう。記念写真の順番を待つために長蛇の列ができている。

一方、“定番”といえるファミリーやカップルの姿は数えるほどだ。やはり、暖かい日や夏と比べれば来客数は少ない。ま、そのぶん、コアラなどもじっくり観察できたというメリットもあったが…。

そんななかでもっとも目立ったのが、一眼レフカメラに30cmぐらいある望遠レンズを装着した年輩の人たちだった。

観察してみると彼らは単独で来園している。一眼レフカメラを肩からかついだ女性も多い。この時期の来園者の主流!?といえるぐらいの存在感なのだ。

「いつもここに動物の写真を撮影しに来ているんですよ。これからの時期は撮影に最適。動物が歩いたり、よく動くので被写体として最高なのです」と、調布から来たという、一脚にキヤノンの一眼レフカメラを装着したおじさんが言った。狙いはユキヒョウ、トラといったネコ科の動物だと笑う。

「夏よりは動物が行動的になりますよね。私はレッサーパンダやコアラなどのかわいい動物を撮影します」

動物たちの飼育スペースを回ってみると、鉄の柵だけでなく、ガラス窓を設けた場所が随所にある。

ガラスはどうしてもさまざまな光や景色を反射させるので、写真にジャマなものが入りやすいが、さすがに動物写真を趣味にする方たちはコツを得ている。

レンズをガラスぎりぎりまで寄せて、手でムダな光を遮って写真を撮影しているのだ。しかも、一眼レフカメラの利点を最大限に使用し、高速シャッターで連写撮影している。

「ほら、とてもかわいく撮れた」と見せてくれたレッサーパンダは躍動感に溢れていた。

“撮り動(?)”の言葉、作品からも寒い時期の動物園は、暑い時期と異なる楽しみに満ちているのが実感できた。

カメラが趣味であっても、そうでなくても、寒い日の動物園は美しく活動的な被写体だらけなのだ。

またひとつ、動物園の楽しみ方を知った。次回来る時はコンパクトデジカメではなく、スポーツを撮影する時のために揃えた高速シャッターで連写できるカメラと望遠レンズを持参しよう!

ガラス越しのワラビー。レンズを手で覆って撮影


バクも機敏に動いていた


唯一といっていい“熟睡”していた動物=オオカミ


昔の動物園は「見世物」だった気がする。珍しい動物を見て、「へーっ!」と思うだけでお客も満足していたのだ。

しかし、現在の動物園は違う。動物を詳しく観察できるし、漠然としかわからない地球規模での自然破壊や温暖化が、明確に理解できるのだ。

たとえば多摩動物公園で見られるユキヒョウは、アジアの山岳地帯一帯に広く棲息していた。そこには棲みかとなる場所がたくさんあり、加えて豊かな草原は狩りの対象となる草食獣の宝庫だった。

しかし、20世紀になると地球環境は激変する。開拓に起因して草食獣が減少した。民家が山奥にまで建てられ、ユキヒョウは害獣と見なされて退治された。さらに、毛皮の乱獲などもあった。近年は地球温暖化にともなって残された自然まで変化しつつある。

これらのさまざまな原因によって、現在のユキヒョウの推定個体数はわずか650~1200頭に過ぎない。

動物の解説を通じて自然環境の変化などの近年の地球規模の問題にも触れているのが近年の動物園だ。

多摩動物公園も動物を知ってもらうための工夫が随所にある。

たとえば無料のガイドツアーの実施が一例だろう。

毎月1日に発行される『動物新聞』は、赤ちゃん誕生のニュースや季節の見どころなどを記載、正門やウォッチングセンターで無料配布されている。これを読めば、季節ごとの動物園の見るべきポイントがはっきりわかる。

さらに、動物の生態を紹介する『動物ガイドブックレット』も発行(ウォッチングセンターで1名1冊無料配布)している。

書き込み式の動物別『かんさつシート』は、ウォッチングセンターで配布しているが、事前にホームページからダウンロードもできる。

動物園にでかける前に、気になる動物の『かんさつシート』をダウンロードし、当日はその動物に焦点を合わせてじっくり観察するというのもいいだろう。

まさに、動物園は見世物公園でなく、生きた勉強と動物体験が可能な場所へと進化したのである。

多摩動物公園をはじめ、全国の動物園は比較的自然環境のよい場所、つまりドライブに適したところに位置する。寒いからと家に閉じこもらないで、寒いからこそ楽しさが増す動物園へおでかけしてみよう。


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●多摩動物公園
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/tama/
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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