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  3. 空高く噴出する蒸気を眺めながら混浴露天の白泥湯に浸かる 大分・明礬温泉
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明礬(みょうばん)温泉は、別府温泉郷のなかでも最も地熱活動が活発な地域。明礬地獄と呼ばれる蒸気噴出孔付近では、江戸時代から続く昔ながらの製法で、湯の花採取が行なわれている。また、美肌効果の高い濃厚な泥湯の露天風呂も、この地域ならではの温泉の楽しみ方だ。
明礬温泉 別府温泉保養ランド
●住所:大分県別府市明礬紺屋地獄
●泉質:単純硫黄泉、酸性明緑礬泉
●泉温:42.4度
●pH:3.3
●湧出量:不明
●日帰り入浴:大人1100円、小学生600円、5歳児以下350円
●営業時間:9:00~20:00
TEL:0977-66-2221


露天鉱泥大浴場(混浴)。中央が女性エリア。左側のパイプで仕切られた部分が立入禁止区域


室内鉱泥大浴場。パイプにつかまって入る。壁に掲げられた効能書きが時代を感じさせる

本館から浴場棟へと続く渡り廊下

鉱泥の採取先は、左から大露天風呂、立ち入り禁止区域、小露天風呂

明礬温泉の湯の花小屋内部。明礬地獄遊歩道は入場料200円


大分県北東部、国東(くにさき)半島がこぶしのように瀬戸内海に突き出している。
半島に隣接する南側の平地はぐっとくぼんでいて、東に別府湾を望む開けた地域が別府市になる。

いわゆる別府温泉は、市内各地に数百あるとされる温泉の総称。別府温泉郷と呼んだほうが、本当はすっきりくる。
とくに海に近い別府市中心部の温泉も別府温泉と呼ばれていて、広い範囲での総称なのか、浜に近い特定地域を指しているのか、使い分けが必要になってくる。

今回訪れた明礬(みょうばん)温泉は、国道500号線を上がって、大分自動車道に近い、伽藍(がらん)岳東側の中腹にある温泉街だ。

別府湾を大分自動車道の橋脚越しに見下ろす丘までくると、右も左も温泉の湯けむりに覆われて、むせかえるような硫黄の香りが漂う。
山の斜面には、茅葺屋根をそのまま地面に置いたような光景が広がっている。 これが明礬温泉名物の湯の花小屋だ。

高温の温泉を木の樋に流すと、不溶性の物質が沈殿する。湯の花は通常、これをかき取ったりして採取される。
だが、明礬温泉の湯の花はまったく別のものだ。

明礬地獄では、地表に噴出する高温の蒸気を、茅葺小屋の中に集めるように溝を掘り、上に重ねた小石や青色粘土を通過させて地表に導く。湯の花小屋内部を35度に保つと、数日後には床一面に絹糸上の結晶体が発生してくる。これが明礬温泉の湯の花だ。

この製造技術は江戸時代から行なわれており、平成18年3月15日に、国指定の重要無形民俗文化財に指定された。

明礬温泉は強酸性で、皮膚病、神経痛、糖尿病に効くと言われてきた。この湯の花は天然由来の薬として、皮膚に塗ったり、入浴剤として利用されてきたものだ。
この製法による「薬用湯の花」は、世界で唯一、明礬温泉だけというから驚く。

湯の花小屋から国道500号線を約500m下ったところにある入浴施設もまた、じつに珍しい泥風呂を体験できる、貴重な温泉だ。

「紺屋地獄」の看板に導かれて広い駐車場に入ると、公共施設のような無機質な建物があった。
「別府温泉保養ランド」という名前からはまったく想像できないが、そこは他に類のない、第一級の温泉施設なのだ。

昭和の雰囲気が漂う受付でお金を払うと、浴場は別棟になっていて、いったん外に出て渡り廊下を歩いていくことになる。
100m以上あるだろうか。屋根はあるものの、吹きさらしでけっこう長い。

浴場棟の中に入るとすぐに畳敷きの大広間があり、売店のある休憩スペースになっていた。これも意表を突く。
売店横の扉が脱衣所への入り口だ。

保養ランドには、下の浴場がある。
 ・露天鉱泥大浴場2カ所(混浴)
 ・瀧湯(混浴)
 ・屋内鉱泥大浴場(男女別)
 ・コロイド硫黄温泉(男女別)
 ・むし湯(男女別)

なぜ保養ランドが第一級の温泉なのかというと、泉質が日本の他の温泉には見られないほどの濃密な泥湯になっていて、むし湯を除くすべての浴槽が“ぶくぶく自噴泉”だからだ。
ぶくぶく自噴泉とは、浴槽の湯底や側面から自然湧出している温泉をいう。
地元の人に親しまれてきた「紺屋地獄」とは、泥湯のぶくぶく自噴泉なのだ。

入浴者はまず、かけ湯をしてから、加水されて濃度も温度も入りやすいコロイド硫黄温泉につかって、体の汚れを落とす。

次に向かうのは、屋内鉱泥大浴場だ。
湯底が泥ですべりやすく、手すりにつかまりながら入浴する。
ややぬるめだが、酸性度が高く、温泉成分濃度が高いので、湯あたりしないよう、長湯には注意。
シャワーで体についた泥を軽く洗い流し、いよいよ露天風呂へ。

露天鉱泥大浴場は、女性の入口部分は、木囲いで覆われていて男性からは見えない。さらに奥に進むと混浴となる。男性と女性の入浴エリアはパイプで仕切られており、男性が入ってこないような配慮もなされている。

露天風呂はどろっとポタージュのように濃厚。足元は砂利と泥だ。
温泉は泥とともに、湯底から湧いてくる。

湯守の話によれば、泥の効用も湧き出す場所によって異なってくるそうで、3つの泥を板の上に乗せて比較してくれた。
大きな露天風呂の泥はアトピーに効果があるという。
もうひとつの小さめの露天風呂の白泥は、さらにねっとりしていてクリーミーな印象。自律神経失調症に効果がある。
こちらの小さな浴槽のほうが、手ですくった泥に髪の毛が混じっていないため、顔に塗る泥パックをするときにも、抵抗がないかもしれない。
これだけの広さのぶくぶく自噴泉、しかも泥湯であれば、清掃も簡単にはできない。
自然湧出によって湯は入れ替わるが、湯を汚さない配慮も必要だろう。
そして、泥がもうひとつ。
露天風呂の立ち入り禁止区域の泥は黒みがかっていて、見た目から明らかに他の場所のものとは違う。こちらは痛みに効くという。

露天風呂というよりも、泥沼にはまってしまったかのような感触。
大自然のなか、温泉の噴煙を眺めながら入れる濃厚な鉱泥湯は、日本ではここしかない。 なんとも豪快だ。

休憩室の畳の上で、しばし休息をとった。
第一印象と温泉のすばらしさに、これほどギャップがある施設も珍しい。
見かけだけでは温泉の善し悪しは判断できないということか。
なにげなく顔に手を触れると、肌がすべすべになっていた。

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大分自動車道・別府ICからは、約3㎞、5分。県道11号から坊主地獄先交差点を左折して国道500号線へ。温泉駐車場は、右手に「紺屋地獄」「別府温泉保養ランド」の看板がある。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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