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日本海に面した山形県庄内地方にある加茂水族館は、クラゲ好きにはたまらない大人気のスポット。きらきら発光するクラゲの神秘を楽しんでから、開湯1300年にもなる古湯の温泉街へと足を伸ばしてみた。
鶴岡市立加茂水族館
所在地:山形県鶴岡市今泉字大久保657-1
TEL:0235-33-3036
●営業時間:9:00~17:00(最終入館は閉館30分前まで/夏休み期間は17:30まで開館)
●定休日:無休
●入館料:1000円/小中学生500円/幼児無料


体が扁平で、外殻の櫛板(くしいた)に光が反射するサビキウリクラゲ。珍しいクラゲの展示がいくつも続く

ボールキャッチや輪投げのほか、水槽の端から身を乗り出してご挨拶。愛嬌たっぷりのアシカだ


温海温泉
所在地:山形県鶴岡市湯温海丁3番地先
●泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉
●源泉温度:56.5度
●pH:7.3
●湧出量:1300?/分


湯之里橋飲泉所。橋のちょうど中間地点にある飲泉所でとても珍しい


葉月橋通りの飲泉所と「あんべ湯」。共同浴場や買い物の途中でひと休み

「たちばなや」脇にある足湯の「もっけ湯」。もっけとは庄内地方の方言で“感謝”を表す


以前から興味があった水族館に出かけてみようと、山形県庄内地方まで足を伸ばしてみた。
向かったのは鶴岡市、加茂水族館。
50種以上のクラゲで有名な、日本一の展示数、いや世界一のクラゲの水族館だ。

加茂水族館の名をここまで引き上げたのは、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩先生との交流が大きい。
下村先生は、ウミホタルやオワンクラゲなど、発光生物の発光メカニズムを解明し、オワンクラゲの「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と開発」でノーベル賞を受賞した。
この技術はがん細胞のマーカーへの応用など、医学生物学の重要な研究ツールとして医学臨床分野に大きな影響をおよぼしている。

加茂水族館は以前よりオワンクラゲの展示を行なっていたが、下村先生の受賞によって入館者が激増。
人工繁殖して世代交代させると発光しなくなることから、村上龍男館長が受賞の祝電を打ち、手紙を送ったことがきっかけとなった。
発光物質であるイクオリンの働きを高めるため、下村先生からエサにセレンテラジンを加えるアドバイスを受ける。その結果、見事に発光。以来、記念講演会に水族館を訪ねるなど、交流が続いている。  

漆黒の水槽を漂うクラゲの中には、透明な体を支える櫛板に光が反射して宇宙船のように虹色に光る種類もある。それはまさに“神秘”のひとこと。
ガラスに額を寄せ、ずっと観察していたくなるほど、不思議な進化を遂げたクラゲに魅せられてしまう。

バーカウンターのような「クラゲバー」では、成長段階のクラゲを分類展示して解説。
圧巻なのは、直径5メートルにもなる「クラゲドリームシアター」の水槽だ。背の高さをはるかに超えた円形の大窓越しに、約2000匹ものミズクラゲが流れに揺らめいている。  

クラゲのエンターテインメントに、時間が経つのを忘れてしまった。  

クラゲだけではなく、大空を望む吹き抜けのプールでは、アイドルのアシカがスペシャルステージを披露してくれる。
子どもだけでなく、おとなも十分に楽しめる施設だった。  

加茂水族館から海沿いの県道50号線を南下し、国道7号線に移って海岸線を走ること約30分。
今回のもうひとつの目的地、あつみ温泉に到着した。  

あつみ温泉は、日本海から内陸のほうに少し入り、温海岳(736m)の南を流れる温海川沿いにある温泉地だ。
宿泊施設は大型旅館など8軒。数こそそれほど多くはないが、温泉街を東西に走る県道44号線沿いには木造三階建ての旅館などが残っていて、歴史の古さを物語っている。

温泉街の中央に温泉神社があった。
祠の脇にある由来書きには、こう記してある。

<あつみ温泉の由来については諸説語られておりますが、その昔大同二年(八〇七)手負いの鶴が湯浴みして傷を癒していた、又は嘉祥二年(八四九)大地震で温泉が湧き出したなどと伝えられております。この湯が沢(沢をゾまたはソという)のごとく流れ出るところを湯蔵権現と崇め湯蔵権現堂を建立、ついで薬師神社としても祀られておりました。後には由豆佐売(ゆずさめ)神社として承認されました。>  

大同年間は桓武天皇崩御後の平安初期にあたり、坂上田村麻呂が蝦夷を鎮圧した延暦16年(797)から約10年後に当たる。
同じ山形県にある肘折温泉の開湯も同じ年代。 大同元年10月に唐から戻った空海(774~835)は、弟子である修験者を使って日本のあちこちで真言密教の布教に努めたと思われる。
弘法大師空海が発見したという伝説が残る温泉は日本各地に点在しており、有名どころだと、芦ノ牧温泉(福島)、関温泉(新潟)、燕温泉(新潟)、法師温泉(群馬)、修善寺温泉(静岡)、龍神温泉(和歌山)、杖立温泉(熊本)などが挙げられる。
これらの温泉のいくつかの開湯時期は大同年間とされ、布教と新時代の幕開けをもって弘法大師を印象づける効果を狙っているのは間違いない。  

あつみ温泉は、弘法大師発見伝承のほかにも、さらに100年ほどさかのぼって修験道の開祖とされる役小角(634~701)が発見したという説もある。  

あつみ観光協会のホームページに、温海地域の歴史に関する表記があった。
それによると、<温海には地域内各地から出土した石器、土器により、縄文時代に先住民族が居住していたと推測される。>
日本海に面した山形県と新潟県の県境に鼠ヶ関(ねずがせき)という漁村があるが、昭和43年に発掘調査が行なわれ、鶴岡市指定史跡の「古代鼠ヶ関址」となっている。
この史跡について、<古代鼠ヶ関址は、十一世紀から十二世紀以前からのものとして判定されていることからも温海地域の起源はおよそ千年から千三百年の昔に遡ることができると思われる。>とある。  

少なくとも1000年以上にわたって、この地域の温泉は人々に利用されてきた。
“温海”という地名も、いかにも温泉地らしい名前ではないか。  

昭和26年にあつみ温泉で大火があり、それを機に源泉が整理統合され、温海温泉源泉有限会社によって集中管理されている。
日本庭園が美しい旅館「たちばなや」に掲げられていた温泉の注意書きには、<現在使用している三つの源泉より、概ね60℃、毎分1,300リットル、1日ドラム缶9360本分の温泉を揚湯しています。>とあった。  

泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫化塩温泉。
塩気のある食塩泉で、温泉街には2カ所の飲泉所と3カ所の足湯も設けられている。
「湯之里橋飲泉所」は温海川に架かる橋の中間地点にある。橋の上にある飲泉所というのも珍しい。
備え付けのコップでひと口ごくり。しっかりと塩気を感じる、純然たる温泉だ。  

川を渡り、「たちばなや」脇の川沿いには、「もっけ湯」という大きな足湯のウッドデッキがあった。
温海川を見下ろすようにのんびりと足を温める。春には桜並木が彩りを添え、秋には鮭が遡上する。田舎の風情豊かな休日にぴったりの足湯。傍らの籠には「たちばなや」が用意したタオルが置いてあって至れり尽せり。  

葉月橋通りにある「葉月橋通り飲泉所」には、隣に「あんべ湯」という足湯もあった。「あんべ」というのは塩梅(あんばい)という言葉とアベニュー(並木道)を掛けたもの。こちらは温泉街のそぞろ歩きの休憩所にぴったり。  

また、温泉街には共同浴場も3つあって、協力金200円を払えば誰でも入浴できる。地元の人々の生活を垣間見るのにはもってこいの環境だ。

ひとつ残念だったのは、天気のいい週末だというのに、人通りがあまり多くはなかったということ。
温泉街として全国的にも恵まれた環境にありながら、まだまだその良さを伝えきれていないのかもしれない。

ハード面としての体裁ではなく、この地を盛り上げていくための、ソフト面でのムードメーカーが必要なのだろう。それが人物なのか、店舗なのか。
宿や店舗を経営する世代が変わり、温海を愛する仲間同士で盛り上がることができれば、この温泉地はもっと楽しくなる。

高いポテンシャルを秘めた温泉地だけに、これからどう変わっていくのか、注視していきたくなった。

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鶴岡市内からは羽州浜街道・国道7号線を南西し、無料区間の日本海東北自動車道・いらがわICで下りて約32㎞、35分。
寒河江市内からは山形自動車道に入り、鶴岡市で日本海東北自動車道に入って約105㎞、1時間45分。
新潟県村上市内からは国道7号線を北上、約58㎞、1時間。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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