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  3. 暑い時期だけ入れる野趣たっぷりの川湯【秋田・奥小安 大湯温泉 阿部旅館】
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「地獄釜」と呼ばれる、温泉が岩壁を伝って湧き、湯気が噴き出す大噴湯が名物の小安峡。その景色だけでも温泉が豊富な土地であるのがわかりますが、その奥に位置する阿部旅館は、暑い時期だけ入れる特別な温泉をもつ一軒宿でした。
湧き出す温泉、吹き出す湯気

露天風呂の下が9月まで入れる天然川風呂

大自然の中の湯は空気もうまい

風情のある内湯も設けられている

奥小安 大湯温泉 阿部旅館
●住所:秋田県湯沢市皆瀬小安奥山国有林34
●泉質:アルカリ性単純温泉(pH7.2)
●源泉温度:98度 湧出量測定不可
●日帰り入浴:8時~19時30分(入浴は20時まで)、500円
※要予約の個室利用休憩あり。宿泊1泊2食1万1000円~
TEL:0183-47-5102


「そこも入れるんですか? 知りませんでした」
「地獄釜」の遊歩道が観光名所になっている小安峡の奥に名湯があると聞いてツーリングで立ち寄った二人組の男性が声をかけてきた。

小安峡は皆瀬川の急流が長年にわたって両岸を侵食してできた深い渓谷である。駐車場にクルマをとめて遊歩道の長い階段を下る。やがて、周囲から聞こえる「シュー、シューッ」という音が大きくなってきた。
98度の熱湯と共に、勢いよく吹き出す蒸気が生み出す音だ。岩肌をつたって落ちてきた温泉が、ちょろちょろと足元に流れる。しかし、とても触ってみる気にはならない。湯気の勢いからいって、高温であるのが間違いないからだ。

奥小安 大湯温泉は小安峡からさらに栗駒山方面にクルマを走らせたところにある。阿部旅館は一軒宿。森の中に流れる渓流沿いにある。

開湯は文化年間(1804年~1817年)。
現在の経営者は阿部旅館の3代目だが、話は初代の頃にさかのぼる。栗駒山麓の瀬川温泉と日本海を結ぶ山道は、山の幸と海の幸を交互に運ぶ重要なルートでもあった。当時は木材を運ぶためのトロッコ列車の線路も周囲に設置されていた。
それぞれの途中に大湯温泉は位置していた。そのために、湯治や仕事の疲れを癒すために訪れる客は少なくなかった。

しかし、大湯温泉の経営者は、子どもを秋田県横手の有名学校に進学させるために、温泉経営から手を引くことを決意する。
「貴重な温泉を守らなければ」と後を継いだのが阿部旅館の初代である。以来、温泉湧出量は「あまりに多いために測定不可」という、貴重でぜいたくな温泉は守られて現在に至っている。

本館から続く風情ある階段を下ると、温泉棟に出る。
昔の湯小屋の佇まいを大事にした「今昔風呂」。
湯船にひのき、内装に青森ヒバを使用した「ひのき風呂」。
源泉を利用した「源泉蒸し風呂」などが設けられている。
加えて「かじか風呂」、「せせらぎ風呂」、「露天風呂」などの開放的な湯船もある。

「かじか風呂」は大湯の沢沿いに設置されており、深さのある立ち湯も設けられている。その下に、天然川風呂があるのだ。

沢のやや上流にある湧出口から湧き出た源泉を堰き止めただけの天然の川風呂だ。源泉は98度と高く、とても入れるものではないが、美しい清流の水が混じり、7月~9月だけの限定野天風呂となる。

女性もバスタオルを巻いて、あるいは水着着用で入れるのだが、「自然の恩恵」という言葉が頭に浮かぶほどのぜいたくな湯だ。
川湯につかっていると、川にしか見えないこの場所も温泉であることを知ったツーリストたちが「失礼します」と入浴してきた。
「みなさんが入っているのを見なければ、川湯に入らずに帰るところでした。貴重な経験をうっかり逃すところでした」と笑う。

7月から9月であれば気温は高い。湯気はあっという間に消える。なにも知らなければ、川が温泉だとは気づくまい。

周囲を緑に包まれた天然川風呂。そして、2階建ての旅館の外観も、濃淡のブラウン系で景観をじゃましない。
たまたま、秋田の奥地にある名湯で知り合ったもの同士、旅で得た情報の交換などの会話が尽きなかった。
清流が混じって温泉は、長湯ができる居心地のよい空間だった。

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東北自動車道一関IC、築館ICから国道342号、国道398号などを経由して約1時間30分。ただし、冬期は国道398号が一部閉鎖となるために秋田県側からのルートを利用のこと。
< PROFILE >
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。旅雑誌などに連載中。
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