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全国のさまざまな温泉を訪ねていると、大きな温泉地にあるわけではなく、規模も小さいのに特上の温泉宿に出合うことがあります。今回、ご紹介するのはお寺の境内に湧く上質の温泉をもつ“宿坊”です。
河津桜と菜の花が美しい河津の早春

禅の湯の境内にはお地蔵さんも

本堂の奥に小さいけれどモダンな宿泊施設がある

加水・加熱・循環なしの天然温泉が最大の魅力

テラスでバーベキューも可能

天城山は晩秋までハイキングシーズンだ(八丁池)

伊豆・天城温泉 禅の湯
●住所:静岡県賀茂郡河津町梨本28-1
●泉質:ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩温泉(低張性・アルカリ性・高温泉)
●源泉温度:49.5.度
●pH:9.0
●スタンダードプラン6800円~、金目鯛しゃぶしゃぶ付プラン10800円~など各種宿泊プランあり
TEL:0558-35-7253(8時~21時)


静岡県・伊豆半島の河津は、2月中旬から3月上旬にかけて、大勢の観光客が訪れる。お目当ては“河津桜”である。

1955年に河津川沿いの雑草の中で芽吹いている桜の苗を、現在の地に植えたのが河津桜の始まりだ。11年後に大きくなった桜の樹は、1月下旬から淡紅色の花をつけ、1カ月も咲き続けた。
以来、河津川沿いの桜は約800本にも増え、毎年美しい花を咲かせて、200万人前後の観光客を呼ぶまでなった。

温泉の宝庫である伊豆半島だから、河津の海沿いや駅の周辺にも温泉施設がある。
河津桜を愛でた後に、川沿いの足湯でゆったりくつろいだり、共同浴場につかる観光客も珍しくない。

今回、紹介するのは河津の駅から湯ヶ野温泉を経て、温泉通に人気の河津七滝温泉に向かう途中にある、とても小さな温泉宿だ。名前を「天城温泉 禅の湯(ぜんのゆ)」という。

日本全国の温泉を訪ねる旅をしていると、時々とても素敵な“小さい温泉宿”に出合う。大温泉地に位置するのでもなく、1軒宿といってもそれなりの収容人数を誇るわけでもない。それでも、とても魅力的なのだ。

たとえば、温泉の湧出量に見合った規模の湯船を造るので、源泉かけ流し。湯温に恵まれていれば、「加水」なしの100%の温泉が楽しめる。さらに、飲泉ができるところもある。宿の規模は小さくても、貴重な天然温泉を存分に味わえるのだ。

禅の湯は平成19年に慈眼院の境内に湧いた湯だ。すべての浴槽が100%の天然温泉。加水、加熱、循環をしていない。
宿泊人数に見合った湯船は大きくないが、内湯と天城の緑が眺められ、デッキチェアーも置かれたテラスのような露天風呂がある。
さらに、岩盤浴「石の湯」も備えている。温泉母岩やトルマリン、無機ゲルマニウムなどを敷き詰めた敷石形式の寝転がれるサウナで、効能も十分に期待できるのだ。

驚かされたのが、「飲泉」ができることだ。
保健所の指導によって飲泉は規制されている場合が多い。また、新しい温泉ですぐに飲泉が許可されるのも珍しい。しかし、禅の湯では飲泉が許されている。

スタッフに尋ねれば、「湯量も豊富ですし、なんといっても天然のままで手を加えていないので飲泉できるのです。これは、仏様のお恵みですね」と返ってきた。

禅の湯はその名の通り、お寺の境内に湧く湯だ。ボーリングによって掘った湯ではあるが、まさに恵みの湯が湧き出してきた。
泉温は49.5度。湯船に注ぎ込むうちに、適温になるから加水・加熱は不要だった。湧出量は毎分169?。境内に建つ宿泊施設のためには十分過ぎる湯量。こうして、理想的な温泉環境がそろったのだ。

宿坊というと、長野の善光寺あたりの宿坊が有名だ。仏教寺院の境内や周囲にあり、僧侶や参拝客のために造られた宿泊施設をいう。食事なども仏教の教えに従った精進料理を出すケースが多い。

しかし、禅の湯は宿坊ではあるが、温泉客のニーズに応える順応性も併せ持つ。

筆者は2連泊したのだが、最初の夜は仲間と屋外で牛肉たっぷりのバーベキューを楽しんだ。
2泊目は創作季節料理と追加で頼んだ当地の名物である金目鯛の料理に舌鼓を打った。

客室についてもさまざまな工夫が見える。リニューアルして和洋室も完成。トイレとツインベッドが備わった部屋ができた。
宿坊といえば和室だが、その概念を大きく超えている。

それでは宿坊ではないじゃないか・・・という声も聞こえそうである。
筆者の2泊のスケジュールは、1日目に伊豆観光をして宿に着き、夕食はバーベキュー。2日目は天城山中のハイキングを楽しみ、夜は金目鯛と創作料理。そして、3日目はお寺の温泉ならではの、座禅体験をしたのだ。

オプションには座禅体験、ヨガ教室、瞑想、お水取り、スピリチュアルカウンセリングなどが並ぶ。境内に宿泊することのメリットを存分に生かせるのだ。

ただし、ウキウキと座禅体験に参加してはいけない。筆者も含めて、仲間も、姿勢が乱れたり邪心が見えた時には、僧侶の持つ警策(きょうさく)が肩に飛んできた。

さて、河津桜の季節は来年まで待たなくてはならないが、天城山麓のハイキングに最適なこれからの季節。禅の湯のような小さくても極上の温泉宿で過ごしてみたらいかがだろう。
上質温泉につかり、上質温泉を飲んで体を癒やし、座禅体験(日曜朝のみ)をして心を清める。

それはとても素敵な温泉旅行になる。

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東名高速沼津ICから国道136 号→伊豆中央道(有料)→修善寺道路(有料)で約60㎞。このルートだと浄蓮の滝などを経由する。また走行距離は長くなるが、熱海→伊東→伊豆高原→熱川を経由する伊豆半島東岸ルートは観光立ち寄りスポットが多い。
< PROFILE >
篠遠 泉
出版社勤務時はスポーツやアウトドア、旅関連ムックの編集長を務める。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。旅雑誌などに連載中。
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