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石川さゆりが歌う『天城越え』の歌詞には浄蓮の滝、寒天橋、天城隧道などの天城峠周辺の地名が出てきます。「恨んでも…」の歌詞もあるので、失恋といったイメージがありましたが、浄蓮の滝は観光客が釣り糸を垂らす賑やかな場所でした。

国内外から観光客が訪れる浄蓮の滝


滝のすぐ下流に釣り場がある


貸し竿でトライするカップル


正直なところ、僕はあまり演歌を聴かない。

旅やレジャー関係の仕事で地方に行く機会が多く、そんなおりに場末のスナックに誘われる。

地元のおじちゃん、おばちゃんに混じってカラオケに興じなければいけない事態に遭遇するから、困らない程度に演歌を覚えているぐらいである。今風の流行り歌では常連さんたちに受けが悪いから、地方都市での交流に演歌は欠かせない。

恋する若者たちはポップなリズムでココナッツ(!)、風や波に乗ってビーチや南国に向かう傾向がある。

しかし、失恋した人は一転、北国に足を運ぶ。連絡船に涙で乗り、かすむ灯台を眺め、寒風吹く小さな町の居酒屋で炙った肴を片手に酒を飲む。

ま、これは完全に僕の偏ったイメージなのだが、演歌といえば失恋、そして北や雪国である。南国に失恋は似合わない。

こんな僕でも年に1回、演歌をじっくり聴くことがある。そう、NHKの紅白歌合戦だ。日本を代表する演歌歌手が出演するだけに、彼らの唄声や、こぶしまわしに圧倒される。

お気に入りは、石川さゆりの『天城越え』である。

着物姿の石川さゆりが、全身を美しく使って歌い上げる恨み節。視聴者を圧倒するすご味がそこにはある。

吉岡治が書いた歌詞に出てくるのが、浄蓮の滝、寒天橋、天城隧道といった伊豆半島天城周辺の地名だ。

演歌といえば北国が似合うと思い込んでいる僕である。

しかし、誰かに盗られるくらいなら殺してもいいか?と、男性への執着を物語る唄の舞台が太陽の似合う伊豆半島…。

確かに川端康成の小説にも伊豆を舞台にした悲恋がある。それでも伊豆の陽光と恨み恋のイメージが合わなくて、ならばとばかりに天城にでかけてみた。

浄蓮の滝の駐車場は他県ナンバーで混雑していた。

滝壺に続く階段を下りていくと、次第に予期せぬ歓声が響いてくる。それは、滝壺から流れる清流に設置された釣り場からだった。

立ち寄った観光客が釣り竿を借りて、魚釣りに夢中になっている。やはり、この地は明るい笑い声がしっくりくる。とはいえ、浄蓮の滝で釣り体験ができるとは、今まで知らなかった。

釣ったアマゴをさばくサービスも


時間単位で釣り体験ができる


アマゴは20cmほどの川魚


日本の滝百選に選定されている浄蓮の滝は、伊豆半島のほぼ中央部に位置する。落差約25mの直瀑で、滝の近くに浄蓮寺という寺院があったのが、その名の由来とする説が強い。

お土産店が並ぶ駐車場から滝壺までは階段状の歩道が整備されており、観光客はそれを下って滝見物をする。

滝壺の近くにもワサビを売るお店やおみやげ店があるのだが、そのひとつに「天城国際鱒釣場」があった。

浄蓮の滝から続く清流を利用した常設釣り場で、ニジマスや“清流の女王”と呼ばれる天女魚(アマゴ)を放流。入漁料金は30分、1時間、2時間、1日となっているので、滝見たさに立ち寄った観光客でも気軽に釣り体験ができるのだ。

アマゴはヤマメに近い種類の川魚で、伊豆地方では最上流部に棲息する。美しい川でなければ育たないのだが、天城といえばワサビの栽培でも知られる清流の地。

湧水量が豊富で、水がどこまでも美しいのだから、ワサビだけでなくアマゴが育つにも最適な環境といえる。

アマゴの味は淡泊ながら、ほどよい甘味があり、川魚好きの間では「クセがなくておいしい」と評判だという。

塩焼きがおすすめだが、地元では大きく育ててブランド化し、刺身としても供しているという。

さて、天城国際鱒釣場では、もちろん貸し竿やエサの用意がある。エサはイクラやブドウ虫。釣り初心者にとって虫を付けるのは若干抵抗があるが、イクラなら付けやすいだろう。
そして、釣った魚は入漁料によって3~15本まで持ち帰りが可能だ。自宅で、あるいは近隣のデイキャンプ場で塩焼きにして食べるのがいい。自分で釣り揚げた魚の味は格別だ。

釣り場に目をやれば、カップルやファミリーが目立つ。普段、釣りとは縁遠いような人たちが、一心に釣り糸を川に垂らす。

時には釣りあげて、あるいはバラして歓声をあげる。その声が遊歩道の上まで届いていたのだ。

なかには中国人のグループもいた。なるほど、ここは国際釣場である。

道の駅天城越えは施設が充実


今や人気スポットとなった天城隧道


旧街道にある寒天橋


釣り場で遊ぶのにかかる料金は、1時間なら1625円、貸し竿が215円、エサが110円だ。浄蓮の滝という場所と、楽しみを考えれば高い料金ではない。

天城へのおでかけのアクティビティのひとつとしていかがだろうか。釣りの次は天城でできる体験を堪能したいものだ。

ついこの前、この連載において長野県の安曇野で経験したワサビ漬け作り体験を書いたが、アマゴが育つ清流のある天城だけに、こちらでもワサビ漬け作り体験ができる。

場所は浄蓮の滝から近い、「道の駅 天城越え」だ。この道の駅は施設の充実ぶりが特筆もので、森の情報館、移築した井上靖の家や天城・伊豆にゆかりの作家の資料や原稿を収集した「伊豆近代文学博物館」、売店などがある。

そのなかの「天城わさびの里」でワサビ漬け作り体験やワサビ収穫体験ができるのだ。
また、バニラソフトクリームの上に、たっぷりの生ワサビをトッピングした「わさびソフト」は大人気。

僕も試してみた。粉ワサビと異なり、ていねいに摺った生ワサビは空気を含んでふわふわとしている。不自然な“ツーン”感がなく、最初は新鮮なワサビ本来の旨みとバニラアイスの甘味が口の中に広がり、後からワサビの辛味が来る。

不思議な味わいだが、なんとなくクセになる旨みでもある。

道の駅を出たら周辺の散策を楽しみたい。

新道を離れて旧道周辺を行けば『天城越え』の歌詞に登場する天城隧道や寒天橋を訪れることができる。

石造りの天城隧道は人気スポットになっているから、隧道出口にある駐車場にクルマを停めて、隧道の写真を撮影したり、隧道を歩いて通る人が目立つ。

しかし、寒天橋はひっそり昔ながらの姿で佇む。気を付けていないと見逃してしまうほどだ。

作詞家の吉岡治さんは、「小夜時雨 寒天橋…」と、よく書いたものだと感心したのだった。


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