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独特の“ツーン”とする辛味があるワサビは、日本原産の植物。本来は土で育つ植物ですが、根茎が大きく育つために美しい水を用いた“ワサビ田”で栽培する方法が主流になりました。栽培直後のワサビを使用して、ワサビ漬け作りに体験できる施設があります。

日除けネットがかけられたワサビ田


みごとなワサビが販売されていた


最初に講師の説明を受ける


「この地方のコーヒーは抜群にうまいよ、水がいいからね」と、安曇野に暮らす友人に何度も言われてご馳走になっていた。スキー雑誌の編集の仕事をしていて、雪が積もる季節になれば白馬のスキー場に通っていた頃の話だ。

白馬に行くには長野自動車道の豊科IC(現・安曇野IC)を降り、安曇野、大町と抜けていくルートになる。そのために、帰りに安曇野の友人宅を訪ね、おいしいコーヒーをいただいて仕事の疲れを癒すのが常だった。

コーヒーがおいしい理由のひとつは友人が使用する豆にこだわり、丁寧に挽いて、ゆっくりとお湯を注ぎ入れるためだ。しかし、それは二番目の要素だと友人は言う。

コーヒーを断然おいしくするのは、安曇野の水なのだと彼はうれしそうに話していたのを思い出す。

安曇野は人の手が入らない森が、未だ多く残された北アルプスの麓。雪融け水が湧き出る、自然環境に恵まれた土地だ。

ワサビの水栽培は豊富できれいな水が必要だ。透水性のよい土壌と、美しく冷たい水が不可欠で、ワサビが苦手な日光を遮ることで栽培する。ちなみに、水温20度以上の時間が3時間続くと、ワサビの根は腐敗し始めるそうだ。

コーヒーをおいしくする安曇野の水はワサビの栽培にも最適。観光地として人気の「大王わさび農場」は、安曇野の湧水に着目した先代が、大正~昭和初期に20年もの歳月をかけて、雑草茂る原野をワサビ田にしたのが始まりだ。

以来、安曇野の美しい水に恵まれた環境でワサビは順調に育ち、大王わさび農場が生産するワサビは、約90%を占めて「ワサビ生産高日本一の長野県」のために大いに貢献している。

観光バスも立ち寄る大王わさび農場は、わさびソフトクリームを始め、ワサビを生かしたグルメが豊富だが、わさび関連製品も数多く販売される。人気はワサビがたっぷり入ったワサビ漬けである。

そのワサビ漬けを自分で作れる体験教室が評判と聞いて入校してみた。基本的に事前予約が必要だし、観光バスで立ち寄る短い時間では30分ほどの体験教室への参加は難しいため、入校した日は休日にも関わらず混雑していない。余裕をもってワサビ漬け作りを堪能できたのだった。

細切りが肝心なワサビ漬け作り


切ったワサビを叩いて辛味を出す


酒粕と切ったワサビを混ぜていく


体験教室内のテーブルには、予約した人数分のまな板が並べられ、その上に「イモ」と呼ばれるワサビの太い部分と、茎が置かれていた。

まな板の後ろには金属製のボウルがあり、中には大王わさび農場特製の酒粕が小さめのおにぎりのように丸められて入っていた。

まずは包丁を使ってイモを切る。タテにスライスしてから、細切りにしていく。実はこの段階がワサビ漬け作りの“ミソ”なのだ。

細かくすればするほど、イモの表面積が増えるから、それが酒粕に染み込んで“辛味のきいた”ワサビ漬けになる。

一緒に挑戦した知人の細切り具合を覗き見る。ウッ、マッチ棒ほどある。これでは太過ぎだ! 少々安心するのと同時に、笑いが込み上げてくる。

一方、トントントンとリズム感抜群の包丁音を響かせていた隣人のイモは、細切りのお手本のように細く均等で美しい。

これが入ったワサビ漬けはおいしそうだぞ、と羨ましくなる。

「体験教室に入った方のなかには、自分で作ったものと、お友達が作ったものを交換する人もいます。味の違いが楽しめますから」と、教室の講師。

体験教室では二箱分を作るから、そのうちのひとつを交換する方法もあると言うのだ。なるほど、包丁の達人が作ったワサビ漬けと、ぼくが不器用に切ったワサビで作ったもの、その味を比べてみるのもおもしろい。

茎は長さ2~3㎜の輪切りにする。これによって食感が増す。

それぞれを切り終わったら、ボウルに入れて酒粕と混ぜ合わせていく。徐々に見た目がワサビ漬けになってきた。体験教室での工程はほぼこれで終了。後は出来上がったワサビ漬けをパッキングすれば完成だ。

イモは案外堅いから細切りに苦労する。とはいえ、包丁を扱った経験があるのなら、子どもでも参加が可能だろう。

美しい湧き水がある土地だからできるワサビ栽培と、それを生かしたワサビ漬け作り体験教室。しかも作ったワサビ漬け2箱を持ち帰れるのだから、おみやげにもなる。なかなか魅力的な体験である。

包丁自慢の腕を振るった二人


あとは熟成させるだけとなった


高級ワサビ漬け「粋美」が完成


酒粕とワサビ(イモ)の細切り、茎の輪切りを混ぜて完成したワサビ漬けをパッキングする。

まずは四角いビニールの中央部にワサビ漬けを入れて、折り畳んで包む。実は体験教室で作ったワサビ漬けはすぐに食べられない。包んでから2日は冷蔵庫に入れて熟成させる必要があるためだ。

冷蔵庫で眠っているうちにワサビの辛味が酒粕に広がって、おいしくてご飯に合うワサビ漬けの完成となる。すぐに食べたい、でも辛抱する時間がワサビ漬けをおいしくするというわけだ。

次にビニールで丁寧に包んだワサビ漬けをパッケージ用のケースに入れる。折れ線に従ってケースを箱型にして、その中にワサビ漬けを納めてシールで封印。その箱のまわりに商品名が入った包装紙を巻き、「ワサビ、還元水飴、酒粕、塩…」といった原材料名、賞味期限、内容量が入ったシールを貼ってパッケージを完成させる。

包装紙を見て驚いた。「大王わさび農場 手造りわさび漬け 粋美」と入っているのだ。「粋美」は売店でも販売されている高級ワサビ漬けである。「みなさんと同じ方法で、職人たちが作っています」と講師が言う。毎日、ぼくたちが想像もできないほどのイモを細切りしているのだと言う。

「働けばいいのでは…」。体験教室でリズミカルな包丁音をたてていた友人に、誰かが声をかける。きっと、彼女と同様あるいはそれ以上の包丁技術を持った人たちが、毎日ワサビを切っているのだろう。

製造日と製造者の欄に日付と自分の名前を書き込み、ワサビ漬け作り体験は終わった。
その後はワサビ田を見学し、ソフトクリームを舐め、安曇野の清流でゴムボートに乗って遊んだ。

清流の先には広大な畑が広がり、その向こうは安曇野の森、そしてその上に有明山、常念岳などの山々が連なる。

日本は水に恵まれた国だと再発見できるのもこの体験のよいところである。改めて水の恩恵に感謝したのだった。



ワサビ漬け作り体験は安曇野と同様にワサビの名産地である伊豆半島でも行っている。ワサビ田を訪ねるのは、夏のドライブの清涼のひとときにもなるだろう。
※今回のプレゼントは「大王わさび農場」の手造りわさび漬けセットです。


「おでかけマガジン」より、みなさまへ読者プレゼント実施中!

●安曇野の旅 
http://www.azumino-e-tabi.net/gnavi+index.cid+43.htm

●大王わさび農場
http://www.daiowasabi.co.jp/

●しず旅 わさび漬け作り体験(一例)
http://shizutabi.jp/user/program/id:223/area:42
< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に共著の『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』、一部執筆&プロデュースの『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」の連載ほか。
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