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  3. 新幹線開通の函館で行きたい源泉かけ流しの食塩泉 北海道・湯の川温泉
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北海道新幹線が開通し、函館へのアクセスがより身近になってきた。函館の奥座敷として、多くの宿泊者が訪れる温泉地が湯の川温泉。塩分濃度の高い食塩泉が特徴で、観光の拠点としてのんびりしたい温泉地だ。
函館自由市場協同組合
所在地:北海道函館市新川町1-2
TEL:0138-27-2200
●営業時間:8:00~17:30(店によって異なる)
●定休日:日曜日


はこだて自由市場「市場亭」のウニ・イカ・サーモン丼2500円。イカの甘いこと!

はこだて自由市場はウニ、アワビ、カニ、イカといった北海道ならではの海の幸がいっぱい


湯の川温泉 大盛湯
所在地:北海道函館市湯川2-18-23
TEL:0138-57-6205
●泉質:ナトリウム-塩化物温泉
●源泉温度:64.1度
●pH:6.8
●湧出量:不明
●営業時間:6:30~21:30
●入湯料:大人440円、小学生140円、幼児70円
●定休日:第1、3、5水曜日


湯の川温泉の日帰り温泉「大盛湯」。銭湯気分で気軽に入れる


左から右にいくにしたがって湯はだんだんぬるくなっていく。塩分濃度が高い!

大盛湯の脱衣所は、ロッカーの雰囲気からかどことなく昭和の香りが漂う


2016年3月26日、北海道新幹線が開通し、本州から一気に北海道へ乗り込むことができるようになった。
今回開通したのは、新青森駅から新函館北斗駅まで。東京駅から新函館北斗駅までは、約4時間半で結ばれる。
2031年には、さらに札幌まで延伸される予定だ。

すでに報道されているが、新函館北斗駅は、函館の繁華街からは少し距離がある。在来線だとはこだてライナーで函館駅まで約20分、クルマで18㎞、約30分の道のりだ。

田畑に囲まれた場所に作られた新駅だが、駅前にはレンタカー会社が参入して、新幹線開通とともに営業を開始している。道内ドライブの基点となることは間違いない。  

さて、北海道でぜひ食べておきたいのが、活きイカやウニなど海鮮の珍味。
函館駅前にある「函館朝市」は観光客が殺到するスポットで大人気。間違いないのだが、混み合うのは仕方がない。
そこで、もし市場に行くなら「はこだて自由市場」をおすすめしたい。  

路面電車の市電・新川駅の近くにあるこの市場は、26軒の鮮魚店が軒を連ね、市民の台所として親しまれている。
場内の喫茶店では市場内で購入したものを食べることができ、食堂で出すどんぶりもおいしい。
「市場亭」のウニ、イクラなど、7種が乗った海鮮丼3500円は人気のどんぶり。ほかにウニ、イクラ、イカがそれぞれ別になった海鮮ミニ三色丼2300円や好きな海鮮をお好みで乗せるトッピング丼もある。
函館駅からは1㎞程度の距離だから、市電かクルマでの移動が便利だ。  

市電は函館駅を中心として、西の谷地頭温泉と東の湯の川温泉とを行き来するように走っている。

湯の川温泉は、函館空港に近い松倉川河口、支流の湯の川と鮫川が合流する一帯にある温泉地だ。

「函館湯の川温泉旅館協同組合」のホームページを参考に縁起をひもといてみる。

発見は室町時代の享徳2年(1453)。
<ある木こりが湧き湯を見つけ、負傷時にこの湧き湯を思い出し、腕の痛みを湯治して癒しました。このお礼に薬師如来を作り、小さな祠を建ててお祀りしたという言い伝えが湯倉神社の発祥といわれています。>   

湯倉神社とは湯の川沿いにある温泉の医王社で、温泉街では最も上流に位置する。かつてはこの辺りに泉源があったのだろう。
湯守の神として地元の人々に崇められ、神社の創建は時代が下って徳川秀忠の時代の元和3年(1617)とされている。
主祭神には少彦名神(スクナヒコナ)、大己貴神(オホナムチ=大国主命)、倉稲魂命(ウカノミタマ)の3柱が祀られている。松前藩が承応3年(1654)に社殿を再建し、黄金の薬師如来像(少彦名神)を安置した。

<1653年(承応2年)、松前藩主九代(筆者注:四代の誤りか)・高広(幼名 千勝丸)が難病にかかり、病は日に日に悪化していき、ある夜母の清涼院は「松前城の東にある温泉に行けば、どんな病も治る」という夢を見ます。その温泉に千勝丸を湯治させるとまもなく全快。藩はお礼に、薬師堂を再建、鰐口を奉納しました。これが湯の川温泉の発祥といわれています。
箱館戦争時には、旧幕軍の榎本武揚が傷病兵を療養させ、榎本自身も入湯していたといわれています。「湯の川 野戦療養所跡」のある、湯の川の隣町「榎本町」は彼の名にちなんで名付けられたといわれています。
湯の川の語源は、アイヌ語の「ユ(湯)+ペツ(川)」からきているというのが定説です。 当初の温泉は湯量も少なく、温度も低かったので広くは知られていませんでしたが、明治18年に石川藤助が100度以上毎分140リットルの温泉を掘り当て、明治19年に湯治場を開業以降、入浴客が増え、それに伴い料理店・宿・商店などが建ち並び、湯の川は賑わい始めます。 明治20年には現在の電車通も開通し、歓楽地として栄えることになりました
その後、明治31年には馬車鉄道が開通。大正2年には電車に替わり、大正7年には日本初の有料道路が海岸線に開通し、湯の川はさらに賑わいを増します。現在の函館市民会館のあたりには「湯の川遊園地」ができ、動物園や人工滝・竜宮城など、遊びの場としても有名になりました。>  

組合加盟の旅館・ホテルは17軒ある。
このほか4軒ある銭湯のうち、湯倉神社に最も近い「大盛湯(たいせいゆ)」に向かってみることにした。

大盛湯は、大正時代に営業が始まったという「青木浴場」が前身となっている。戦前は浴場、旅館(寮との説あり)を営んでいたが、昭和29年5月12日未明の湯川大火で焼失する。
昭和30年、新築された浴場は屋号を「大盛湯」として営業を開始。
現在の経営者が昭和50年代前半に前所有者より譲り受け、いまの建物は平成3年11月に建てられたものだ。  

温泉街はずれにたたずんでおり、外観は賃貸アパートのような雰囲気がある。
番台を抜けると脱衣所にはロッカーが並び、いかにも銭湯といった風情が漂う。

加温、加水なし。濾過、塩素も使用せず。
熱交換だけの源泉かけ流し。
すばらしい。
上がり湯のみ水道水を使用している。

3つの浴槽のうち源泉をひとつに流し込み、隣の浴槽に湯が移ることで自然に湯温が下がる仕掛けになっている。
ボイラーで加温する必要がないために、じつは煙突はみせかけだ。
店主の銭湯へのこだわりから建てられたというから驚く。  

さらに興味深いのは、泉質がかなりしょっぱい食塩泉であること。
湯守の話によれば、この一帯の地下には、約4万年前に噴火した火山の熱源があるという。  

湯の川温泉の東、汐泊川の沖合約2㎞、津軽海峡の水深50mのところに、銭亀沢カルデラという噴火口があることがわかっている。
氷河期に陸上で噴火し、現在の函館一帯は数十メートルの火山灰に覆われた。噴火口はその後海の底へ沈んだが、熱源はいまも松倉川周辺にあって、地下では湯だまりとなっている。

湯の川では、井戸水を掘ろうとしても、100mほど掘ると温泉が出てしまうという。
温かい湯が大盛湯の玄関下からもにじみ出ていて、湯の川に流れ込んでいるのだと教えてくれた。  

函館市が平成22年6月にまとめた「函館市温泉資源保護指針」によると、湯の川温泉には38カ所の源泉があり、水道局が22カ所、北海道が2カ所、民間が14カ所所有している。
温泉協同組合のホームページにも<湯の川温泉の湧出量は日量7,000トン(毎分4,861リットル)以上の湯量を誇っており、そのうち函館市が所有・管理する源泉が9本、民間所有の源泉が13本の合計22本あります。>と記載されている。

近年、湧出量が減ってきていることから、湯の川温泉も資源枯渇が懸念されるようになり、利用量の削減に向けて対策を進めつつある。
資源保護の観点から行政が温泉資源を管理するケースも、全国で多く見られるようになってきた。  

温泉資源を大切にしながら、将来にわたって源泉かけ流しというスタイルをどうやって維持していけばいいのか。
無自覚のまま自然の恩恵をむさぼり、いつか気がつけば循環の塩素湯だらけという状況になってしまわないよう、温泉の保全に向けた取り組みが、ここ函館でも進められている。

道央自動車道・大沼公園ICから湯の川温泉までは、大沼国道・5号線を南下して約37.5㎞、45分。
新函館北斗駅からは、大野国道・227号線、道道347号線、産業道路・道道100号線を経由して約23㎞、35分。
函館駅からは海沿いの漁火通・国道278号線を経由して約6㎞、15分。

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< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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