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九州阿蘇山の南山麓にある地獄温泉は約200年の歴史を持ち、かつては限られた人しか入湯することができなかった名湯だ。いまも浴槽の湯底からぶくぶくと、湯が湧き出す奇跡の温泉がそこにある。

地獄温泉 清風荘
所在地:熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327
TEL:0967-67-0005
●泉質(すずめ湯第一泉源):単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)
●源泉温度:41.3度
●湧出量:不明
●pH:2.9
●日帰り入浴:8:00~20:00
●日帰り料金:大人600円、3歳~小学生300円



「すずめの湯」のあつめの湯。湯底が浅く板張りだ


「すずめの湯」のぬるめの湯。スウェーデン3人組が入り浸っていた


本館内湯の「元湯」。唯一シャワーのある浴室


「露天岩風呂」。開放的で阿蘇の大自然を満喫


本館入口。母屋の役割で周辺には宿泊棟が点在する

囲炉裏端で炭火焼が楽しめる曲水庵

九州の阿蘇山は、最高峰の高岳(1592m)をはじめとする阿蘇五岳のほか、1000m級の山が連なる広大なカルデラ(窪地)地形の総称だ。

高く盛り上がった中央火口丘があり、いまも噴煙を上げている。その周辺は平地で、外側を外輪山がぐるりと取り囲むという形状になっている。

外輪山が形成されたのは30万年以上前のこと。それから9万年前までに大きな噴火が4回あり、外輪山の内側は巨大な湖となる。水は南西部の南阿蘇の付近から流れ出し、浸食によって堆積した大地が姿を現し、現在の平坦な窪地が形成されたと考えられている。

熊本市方面から外輪山南西の谷間を抜けてカルデラの内側に入る。しばらく走ると、全体の位置関係を把握することができた。

中央にはなだらかな山塊が広がり、外側が絶壁で囲まれているのがわかる。こうした光景はカルデラならではだ。

今回訪れた地獄温泉は、外輪山の内側、中央の中岳火口から南西部の裾野に位置している。

のどかな田園風景を眺めながら裾野を上がっていくと、木造の建物がいくつか連なる、趣きのある温泉宿が姿を現した。
ここが一軒宿の地獄温泉、清風荘だ。

創業は文化五年(1808)までさかのぼることができる。
丸い大きな提灯に迎えられながら本館の玄関を入る。右手に帳場があり、左の畳敷きのスペースに由緒ある古文書が掲げてあった。

「掟」と記されたこの証文は、温泉の再興にあたって、文化五年正月にこの温泉の入湯心得について熊本細川藩が下した御触書だ。

入浴できる者は、侍と帯刀を許された藩士まで。ごく限られた者だけしか許されておらず、一般向けに営業が始まったのは明治初期になってからのことだ。

かつては湯治宿として親しまれた名残が、客室と宿泊システムに残されている。

宿泊棟は昔ながらの木造の雰囲気が味わえる本館に、湯治棟、増築された東館、新築された新館と、同じ木造建築でも雰囲気が異なる。

また、宿泊料金は、湯治のための自炊連泊から、食事付き、朝食付き、朝夕食付きとさまざまな形態に対応する。

夕食にしても、食事処の囲炉裏端で串焼、鍋コースなどを堪能できるコースのほか、本館個室、広間で京都「菊乃井」で花板を務めた料理長が腕をふるう懐石コースまで、豊富に用意されている。

食事と宿泊を切り離し、それを組み合わせることができるのが、この宿ならではの特徴になっているのだ。

しかし、地獄温泉の名を世に広めたのは、あくまで温泉である。
3つの源泉をもち、施設内には5つの湯が点在している。
なかでも一番人気の湯が「すずめの湯」だ。

本館入口を出て右に行くと、斜面を下っていく階段がある。辺りには硫黄泉の臭気が漂い、目隠しの木立の向こう側に、巨大な丸太で屋根囲いされた浴槽が見えた。

このすずめの湯は、創業当初より、湯底からぶくぶくと湯が自噴する、奇跡の湯「ぶくぶく自噴泉」なのだ。

傍らに脱衣所がある、混浴の露天風呂。大きな浴槽は丸太で仕切られているものの、下は空洞でつながっている。湯底は大岩と玉砂利だ。底に泥がたまっており、すくうとたちまち手が真っ白になった。柱のところどころに手形があるのは、入浴客が泥をつけて押しつけた跡というわけだ。酸性が強く、なめるとかなり酸っぱい。濃度の高さは、別府温泉の泥湯に匹敵するものがある。

丸太は体を預けるのにちょうどいい塩梅。この浴槽は「ぬるめの湯」。小上がりになった場所にやや小さめの「あつめの湯」があり、こちらは浅目で湯底が板敷になっている。縁に頭を乗せて寝湯していると、板の隙間からぽこぽこと湧き出てくるのがわかった。

すずめの湯には脱衣所脇に男女別の内湯もあり、同じ源泉をこちらで楽しむことができる。女性客に配慮して、混浴露天風呂に専用の時間帯が設けてあるのも、やさしい心遣 いといったところだろうか。

このほか本館の「元湯」は男女別の内湯で、温泉濃度が高いために天井を高くし、ガスが貯まらないように通気口で逃がす作りになっている。

地獄温泉の由来となった、草木も生えないガレ場の近くにあるのが男性専用露天風呂「露天岩風呂」と女性専用露天風呂「仇討の湯」。こちらは源泉が66.8度と熱めで、単純酸性温泉と泉質が異なる。四季によって桜や藤、紅葉など景観を楽しめる湯だ。

また湯治棟の先、本館から一番離れた場所にある「新湯」はメタケイ酸を含んだ美肌の湯。岩に囲まれた木の浴槽が、他とはまた違った重厚な趣きで心地よい。

宿で知り合ったのは、スウェーデン出身の男性3人組。
熊本出身の友人が推薦してくれたとのことで、「すずめの湯」にはいたく感激していた。北欧はサウナで有名だが、「本物のボルケーノの温泉はないんだよ」と、日本の温泉文化を体験して大満足の様子だった。


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九州自動車道・熊本ICから国道57号を東へ。阿蘇大橋で国道325号線へ右折。約33㎞、50分。大分自動車道・日田ICからは国道212号日田街道を南下して約78㎞、2時間。
宿から東側にあたる、阿蘇山を南北に縦断するルートの県道111号阿蘇パノラマラインは、阿蘇山の雄大な景色を眺めながら走行することができる。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
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