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  3. 自噴する“奇跡の湯船”をもつ風雅な和モダンの宿 岡山県・奥津温泉
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週末に吉井川奥津橋のたもとで行われる「足踏み洗濯」は奥津温泉の風物詩。その傍らにある奥津荘は、津山藩主が鍵をかけて独り占めしたくなるほど魅力的な、天然自噴の「美人の湯」だった。


奥津橋のたもとにある「洗濯場」。温泉を利用して「足踏み洗濯」が実演される

奥津温泉 奥津荘
所在地:岡山県苫田郡鏡野町奥津48
TEL:0868-52-0021
日帰り入浴料金:大人(中学生以上)1000円/小人(3歳以上)500円
日帰り入浴:11:00~14:00(最終受付13:30)
男性:鍵湯、女性:立湯
●泉質:アルカリ性単純温泉
●源泉温度:42.6度
●湧出量:247?/分
●pH:9.2


やや小さめだが深さのある「立湯」


奥津温泉名物の「鍵湯」。湯底からぶくぶくと源泉が湧く自噴泉だ


棟方志功が長逗留した名残で作品が数多く展示してある


玄関横のカフェスペースは南国リゾートのテイストも取り入れてある

岡山県東部を南北に貫くように流れている吉井川は、備前国の「東の大川」と呼ばれ、美作台地の清流を瀬戸内へとつなぐ一級河川だ。

出雲と近畿地方を結ぶ交通の要路であり、下流部では高瀬舟を利用して物資の運搬に利用されていた。

名称は明治期以降に統一されたもので、それ以前は中国山地からの上流が「奥津川」、津山城下で「津山川」となり、さらに南下すると「周匝川(すさいがわ)」「和気川(わけがわ)」「吉井川」「雄神川(おがみがわ)」と名称を変え、瀬戸内海の児島湾へと注いでいる。

3月上旬から12月上旬の日曜祝日の朝になると、上流の鏡野町の奥津橋のたもとでは、昔ながらの「足踏み洗濯」の光景を見ることができる。

絣の着物に赤いたすき掛けをした着物姿の女性たちが、桶を持って衣類を踏んで洗濯をする。元々は熊やオオカミなど野生の動物に襲われないよう、警戒をしながら洗濯をしたのが始まりと伝えられている。

現在は観光の一環としてその習俗をいまに伝えているが、旅先でこうした光景に出合えるのは微笑ましい。

川の水では足が冷たくなるのでは。だが、その心配は無用だ。
周辺の川底からは漂白力のあるアルカリ性の温泉が自然に湧き出しており、それを利用したものと教えられると合点がゆく。

安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した初代津山藩主の森忠政(1570-1634)は、この温泉を溺愛した人物のひとり。
番人を置いて鍵をかけ、森家専用の湯として一般の入浴を禁じたほどで、村人から「鍵湯」と呼ばれるようになった、という伝承が残されている。

ところでその鍵湯だが、いまも入浴が可能なのだ。
奥津温泉にある奥津荘では、名称もそのままの「鍵湯」に入ることができる。

玄関のあるフロアから、しゃれた赤いタイル張りの階段を下りていくと、「鍵湯」脱衣所の入り口がある。

服を脱ぎ、浴室内の階段をさらに5段ほど下りると6畳ほどの大きさの浴槽があった。

湯底には大石が横たわり、小石とセメントで固められているが、一部、岩盤がむき出しになっているところもある。

よく見ると湯の注ぎ口がどこにもないことに気づく。
ここは吉井川の花崗岩の岩盤とひと続き。
全国でも珍しい、浴槽の湯底から温泉が自然湧出する奇跡の温泉。 温泉がぶくぶくと湧く場所に湯船をつくった、まさしく“ぶくぶく自噴泉”なのだ。

温泉は湯底の岩盤の隙間から湧き出している。
湯船の縁から湯があふれ出し、源泉が外へそのままかけ流されているのがわかる。

源泉の温度はちょうど適温の42.6度。
循環による加温をすることもなく、水も加えずに、つねに新しい適温の湯が供給される。

無味無臭のアルカリ性の自噴泉は、ややぬめりを感じる「美人の湯」。
この新鮮さと透明度は、温かい湧水に入っているかのような感動がある。
泉源を探して岩盤の隙間を探ると、水流を感じるほどだ。

この湯船の壁の向こう側には、同じ岩盤が泉源となっている「立湯」がある。
こちらの湯船はやや小さめだが、深さは約120㎝と深い。
立って入浴する“立湯”で、これもまた珍しいスタイルだ。

明治から昭和にかけて生き抜いた木版画家の棟方志功もこの宿を愛したひとり。
宿のエントランスには、彼の「板画」による作品が展示してある。

2004年に全館をリニューアルし、日本家屋の伝統とシンプルモダンが同居しているのがいかにも現代風だ。

唐破風の玄関、シンプルモダンで雰囲気のあるカフェスペース。
温泉への期待を胸に、ジャズピアノの調べとともに棟方志功の板画に迎え入れられるのも、また風流ではないか。


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奥津温泉へは中国自動車道・院庄ICより吉井川を遡上するように国道179号を北進して約25分。奥津温泉街から奥津川沿いの2㎞に渡る奥津溪は紅葉の名所としても有名。天狗岩や女窟の断崖、般若寺の太子岩などの奇岩の見どころが続き、奥津溪八景とも呼ばれる。
< PROFILE >
長津佳祐
ゴルフや温泉、クルーズ、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。山と溪谷社より共著で『温泉遺産の旅 奇跡の湯 ぶくぶく自噴泉めぐり』を上梓。北海道から九州まで自噴泉の湯船を撮り下ろしで取材した、斬新な切り口の温泉本になっている。
ブログ「デュアルライフプレス」http://blog.duallifepress.com/
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