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坐禅を修行に取り入れているのは「曹洞宗」と「臨済宗」だが、近年「坐禅会」を開催するお寺が増えてきた。東京・広尾にある「香林院」は、月曜~金曜日の朝7時からに加えて日曜日の午後5時からも開催。さっそく朝坐禅体験に出かけた。


広尾の商店街の先にある門。門から商店街方向を見る。周囲にコインパーキングも設置されている


門内の敷地には緑が残り、お寺が点在していた


香林院は1665年の建立。所縁の人物に勝海舟などがいる

いかにも広尾らしいおしゃれなカフェやショップが並ぶ商店街の先に門があり、そこを境に世界は一転する。樹木に囲まれた広大な敷地には東江寺、香林院、霊泉院、祥雲寺が点在、人の声もクルマの音もほとんどない静かな空間になっている。

坐禅体験、坐禅会を開催するお寺が増えたが、ほとんどは月1~2回、曜日や日にちを決めての開催だが、臨済宗の香林院では月~金曜日の朝7時から「朝坐禅」、さらに日曜の午後5時から坐禅会を開催している。しかも、予約不要なので、それこそ“ぶらり”と人が集まってくる。
「20代半ばを過ぎ、修行をして自分を変えたいと思ってきました」と、埼玉県から来た女性が言った。

出勤前に訪れたビジネスマン風の男性もいれば、ジョギングの途中で寄った感じのジャージ姿の若い男性がいる。坐禅部屋に入ってくるなり慣れた手つきで座布団を折り、合掌してから座った外国人男性もいた。

7時少し前、ご住職の金嶽宗信さんが座布団の上で結跏趺坐(けっかふざ・両足を同じ角度で交差させ、両足を太ももの上に載せる)を組む。

僕もそれを真似る。座布団を二枚重ねにして、上の座布団は半分に折り、高いほうに座る。段差があるために、足のしびれはなさそうだ。
次に結跏趺坐に挑戦するが、やったことがない身にはつらい。しかし、片足だけ組む半跏趺坐や足の悪い方は椅子を用いてもいいとのことで、少々気分が楽になった。

7時にご住職が鐘を鳴らす。これが開始の合図だ。合掌してから姿勢を正す。背筋を伸ばして下腹部の丹田(へその下)に力を入れる。呼吸は鼻呼吸。息をゆっくり吐き切ることを意識する。

こうして前半25分の坐禅時間が始まった。


午前7時前に朝坐禅を行う人々が集まってきた


警策で肩を打たれる。修行僧は睡眠時間3時間で20時間近い坐禅を行うため、眠気覚ましの意味もあったそうだ

坐禅の極意とは「無」であると思っていた。もちろん、人生修行が足りないし、初坐禅体験でその真意を理解できるなどと、うぬぼれてもいない。

それでも「無」に近付けると漠然と考えていた。

座って数分。「むむ!」。
まったく無の世界にならない。香林院に備えられたご住職による『朝坐禅のやり方』どおり、“富士山になったつもり”で、どっしり座っているのに、なのである。

むしろ、庭の蝉の声がお腹に響く。虫の声が涼やかに聞こえる。商店街を行くクルマの音が聞こえれば、お寺の外を歩く人の足音まで聞こえるのだ。なんだか想像していた無の心境とは程遠い。

「私たちは毎日6~20時間の坐禅を365日繰り返しています。坐禅に求めるのは無ではなく、“無心で流せる状態”といったほうがいいでしょう。すると、自分が客観的に見えてきます。自分が見えてくれば、たとえば世界は変えられないけれど、世界に合わせて自分が変えられますから、どんなお仕事、そして人生にも役立つと思います」と、ご住職が坐禅の後で教えてくれた。

「では、ご住職も坐禅中はさまざまな音が聞こえるのですか?」と、少々ひねくれた質問をしてみた。

「無にはなりません。むしろ、感覚が研ぎ澄まされるので、より敏感になるのでしょう。お線香の灰が落ちる音がわかります」と、ご住職。

坐禅のときに、ご住職の前にはお線香が立てられる。
時計が普及していない時代でも、お線香が燃え尽きることで時間がわかったという。お寺のお線香は45分と25分のものがあるのだけど、香林院では短いお線香を採用しており、25分×2回の朝坐禅を行っている。

お線香の香りが広がる部屋での坐禅は、落ち着いた気分にさせる効果が抜群だ。


ご住職は結跏趺坐、初体験の女性たちは半跏趺坐で坐禅を行う


ご住職の著書。テレビドラマなどの監修も多数手掛けている


坐禅のあとにご住職を囲んで歓談。坐禅後だけに気持ちが爽やかになっている

25分は思ったより長い。7時とはいえ気温が高かったから、額に汗が浮くし、背筋の緊張はしばしば保てなくなる。

坐禅では目を閉じる必要はない。下を向くのが基本だが、ぼくは時折、ご住職を横目で見ながら、「いつ、警策は登場するんだろう」と、邪心を抱いていた。

警策とは坐禅のときによく見る、姿勢が崩れた人の肩を打って警告を与える棒である。

ご住職の後ろの床の間のところに、長さ1mを超える警策は鎮座している。この出番が見たかった。

しかし、静かな時が過ぎるだけで、いっこうにご住職は立ち上がらないし、警策の出番もないのである。

坐禅が終わったときに尋ねてみると、「朝坐禅ではしていないのです。通勤前の方も多いから、警策はしないでほしいという注文がありまして…」とのこと。日曜は用いられる警策も、毎朝の坐禅では登場しないのだった。

しかし、埼玉県から修行で自分を変えたいと言っていた女性たちは、「警策で喝を入れてください」と、ご住職にお願い。
ならばと、ご住職が警策を持って立ち上がった。

曹洞宗では後ろから叩くが、臨済宗は前から叩く。坐禅中に姿勢が崩れた参加者の肩にパシリ! しかし、修行僧に対するそれとは、比較にならないほど力加減が違うそうだ。

坐禅を終えると、ご住職が「お茶でもいかがですか?」と、隣室に誘う。そこで、しばしば歓談。

東京生まれで“一休さん”に憧れて12歳で京都のお寺に出家、20年の修行の後に香林院のご住職となった経験や、さまざまなドラマや映画の監修を行った経験談が楽しい。

坐禅とその後のご住職のお話に、心惹かれるひととき。毎週とはいかないが、四季折々に坐禅を組むのもいいものだと思う次第だった。


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●香林院
http://kourin-in.com/

●坐禅体験をしているお寺がわかります「宿坊研究会」
http://syukubo.com/spot/02zazen.html

< PROFILE >
木場 新
休日評論家。主な出版物に『温泉遺産』、『パックツアーをVIP旅行に変える78の秘訣』などがある。ウェブサイト「YOMIURI ONLINE」に「いいもんだ田舎暮らし」を連載
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