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木立のなかにある一軒宿。ロビーで日帰り入浴の受付をすませると、その脇に登山電車の乗り場があった。天空の露天風呂へと続くレールをたどっていけば、ちょっとした小旅行を体験できる。

磊庵はぎわら
所在地:長野県佐久市岩村田南西ノ久保2426-1
営業時間:11:30~15:00(LO14:30)/17:00~21:00(LO20:30)
定休日:不定(おもに火曜日)
TEL:0267-67-6661


手前がせいろそば、奥の太いほうが石碾そば
新そばの季節になった。

そばは開花期の気温が涼しく、昼と夜の気温差が大きい時期のほうがうまくなると言われており、夏から秋にかけて種まきし、晩秋には収穫の時期を迎える。
収穫時期は秋と思われているが、じつはそうとも限らない。
栽培時期が70日~90日と短いために一年中栽培が可能。
北海道や東北、長野県など、気候が涼しいところでは10月下旬ごろから収穫が始まるが、温暖な四国や九州では年を越してから収穫される場合もある。

畑で実が七分ほど結実したら刈り取り、実を茎につけたままの状態で数日間乾燥させる。この間に茎や葉の栄養が実に送られ、完熟したそばの実となるわけだ。このあたりは米と同じで、天日干しの稲がうまくなるのと同様、自然の摂理にのっとった収穫法なのだと思う。

香りがもっとも高くなるのは収穫後、2カ月ほど経って水分量が少なくなってきた頃だ。  

そう考えると、なぜ年越しそばを食べるのか、食べ頃の時期がぴたりと符合するのが腑に落ちる。  

長野には安曇野などに名物そば屋があるが、ふだん行き慣れている佐久市に気になるそば屋があり、足を伸ばしてみた。  

佐久IC方面からだと、佐久平駅から国道141号線を南下。あたりは郊外の大型店舗が軒を連ねている。
右手にヤマダ電機を見てその先の中央分離帯が途切れたところで右折し、農道へ入る。田圃道を少し走ると右手にそれらしき民家が見えてくる。そこが目的地のそば屋だ。
カーナビかマップを頼らないと見つかりにくいかもしれない。  

長野県奈川村や川上村で採れた厳選の玄そばを、石臼を使って手で「碾く」。この店はあえてこの漢字をあて「手碾蕎麦」とうたっている。
黒くて太い田舎風の手碾そば(950円)と更科のせいろそば(700円)を比較しながら食べるのがいい。  

そば屋に限っては、風味や硬さ、そばつゆの濃度や味など、自分の好みがあまりにも強すぎて店の優劣をつけるのは非常に難しい。だが、一度気に入らなかった店には再び訪れたことがない。
この店の魅力については、すでに何度か足を運んでいる、ということが味のひとつの証明になろうか。  

私の温泉の師匠、故野口悦男氏は、温泉宿の宿泊料金を決める視点に温泉、食事、風景の3つの要素を掲げた。それぞれに値段をつけていけば、自ずと宿泊料金は決まってくるという。
そば屋に求められるのも、料理の味だけとは限らない。また訪れたくなる店の佇まいというのは評価の大きな視点になると思う。 

きびすを返し、クルマは再び浅間山のふもとをめざした。  


菱野温泉 常盤館
所在地:長野県小諸市菱平762-2
泉質:弱アルカリ性単純泉(薬師館:弱アルカリ性炭酸鉄泉)
源泉:25.4度
湧出量:4.86l/分
pH:8.7
日帰り入浴:中学生以上1000円、3歳~小学生500円
日帰り営業時間:11:00~16:00(最終受付)
TEL:0267-22-0516


視界を遮るもののない木桶の露天風呂。四季折々の景観が楽しめる


急勾配の坂道を、山頂の露天風呂めざして登山電車が上って行く
次の目的地は、絶景の露天風呂のある温泉宿だ。  

国道141号線を北上し、平原交差点を左折して東西に走る国道18号線に合流する。3.8㎞ほど進んだところにある平林交差点で斜め右に折れ、県道130号線に入る。上信越自動車道の高架をくぐり、さらに坂道を登っていくこと約10分。  

木立のなかに瀟洒な旅館が姿を現した。  

常盤館は標高約1000mにある立派な宿構え。
菱野温泉は基本的には一軒宿だが、今年8月に新しく同系列による薬師館もオープンしている。  

常盤館のロビーで受付をすませると、ここからがメインイベントとなる。  

じつは常盤館の浴室は、ここから登山電車というケーブルカーに乗って行かなければならない。
係員のいない小さなケーブルカーに乗り込み、赤い発車ボタンを押すと自動的に動き始めた。
距離は130mほどしかないが、急勾配の坂道をぐんぐん上がっていく。
ちょうど中間点にさしかかったところで、上から来た車両とすれ違った。
終点までの所要時間はわずか1分半。日帰り温泉に来たはずなのに、思いがけず小旅行をしているような気分になる。

山頂駅を出ると、そこにはログハウスのような「展望露天風呂 雲の助」があった。テラスにはいくつものパラソルが開き、湯上りに地ビールを飲むこともできる。  

内風呂の「大石風呂」を抜け、外のテラスへと向かうと、大小の木桶がふたつ。
眼下に木々を見下ろし、天を仰ぎながら木桶の露天風呂に入る。
ようやく至福の時間が訪れた。  

晴れて空気が澄んでいる日には、この建物から八ヶ岳や富士山も眺めることができるという。  

訪問した時期は少し肌寒くなってしまったが、夏には開放的な緑のテラスとして、自然の香りを胸いっぱいに吸い込むことができるだろう。
また、冬には建物の中の喫茶コーナーにあるペレットストーブが暖を与えてくれ、雪見の露天風呂が風情を添えてくれる。

ひとつ、残念なのは源泉の湯温が低いため、加温、循環せざるを得ないことだ。その点については、泉質にこだわる温泉通には若干物足りないかもしれない。
だが意表を突く登山電車や天空のテラスと露天風呂は、旅に非日常的な彩りを添えてくれる。  

佐久のそば屋と絶景の露天風呂は、ともに景観をじつにうまく活用している。佇まいがよければ、また来たいと思えるプラスアルファの期待値が高まるのだ。

泉質ももちろんだが、居心地のよさもまた、温泉旅行の醍醐味ではないだろうか。
< PROFILE >
長津佳祐
観光やレジャー、スローライフを中心に編集・撮影・執筆を手がける。ブログ「デュアルライフプレス」
http://blog.duallifepress.com/
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