1. Smart Accessトップ
  2. おでかけマガジン(+バックナンバー)
  3. 信仰の厚さを感じさせる特別な地「熊本・天草」
「Smart Access」おでかけマガジン 毎月2回、「Smart Access」会員のみなさまへ、旬のドライブ&スポット情報をお届けします。
トップページへ戻る
1566年に天草に伝わった“異国”の宗教=キリスト教。初めて見る青い目をした人々は、病院の設立などで信頼を得て、やがてキリスト教は地域に浸透していきました。しかし、徳川家康によるキリシタン禁令。250年にもおよぶ弾圧。この地には人々の熱い思いがありました。

大江天主堂の敷地内にあるガルニエ神父の銅像


ガルニエ神父が私財を投じて昭和8年に大江天主堂を完成させました
魚介類が豊富でイルカの大群が泳ぐ美しい海に囲まれた熊本県天草を旅するとき、観光客が必ず訪れるのが大江と﨑津のふたつの天主堂です。

1614年に徳川家康によってキリシタン禁令が発せられて以降、250年ものキリシタン弾圧ののち長崎でキリシタンが復活したのは1865年、大浦天主堂が建造されました。

遅れること15年、明治13年(1880年)に天草の地にも神父がやってきます。

翌年にはフェリエ神父が大江に定住を決め、さらに明治25年にはガルニエ神父が32歳で着任。天草での伝道に生涯を捧げ、昭和16年に天草で天に召されたガルニエ神父の熱い想いによって、昭和8年に大江天主堂が完成します。続いて昭和9年には﨑津天主堂も建てられました。

丘の上の白い天主堂と、小さな港町に溶け込んだグレーの天主堂。

天草観光のシンボルともいえる威風堂々としたふたつの天主堂ですが、完成時の島民たちの心境は想像の範疇を遥かに超えています。

約7世代に渡りキリシタン弾圧の中でも信仰を守り続けた人々。家に秘密の小部屋を作り、マリア像を掲げて祈り続けた人々…。

キリシタンであるのが明るみになり、命を落とした人も少なくありません。
人知れず、ひっそりと信仰を守った天草の人々の夢が現実になった日。それが天主堂の竣工でした。

天草の西側に位置する小さな港町に昭和9年に完成した﨑津天主堂があります


100年以上前にガルニエ神父を訪ねて天草を旅した5人の詩人が歩いた道が整備されて遊歩道になっています
「隆盛を誇ったヨーロッパの国の東方支配への第一歩」という見方もある神父の来日ですが、島国で暮らす日本の人々にとって、彼らの文明は驚きの連続でした。
たとえば、長崎の平戸に1552年に渡来し、天草にキリスト教を広めたアルメイダ司祭は外科医でもあり、天草に病院を設立しています。洋画の美しさや音楽の楽しさを伝えた神父もいました。さらに、天草に神学校を設立し、活版印刷機によって宗教書だけでなく、『イソップ童話』なども製版しています。

天草のほとんどの人々はキリスト教に影響を受け、文明に感銘し、そして熱心な信者になっていきました。

「キリシタン大名」が誕生したのもこのころです。

しかし、在外の文化の脅威を知り、さらには掌握しにくい地方での文化のひとり歩きを恐れた徳川家康は、1614年に「キリシタン禁令」を決めます。

島民の大部分が信者だった天草ではそれに反発して一揆が起きます。

1638年には少年総大将・天草四郎率いるキリシタン勢力との「島原・天草の乱」が勃発しました。

結果的には、それらが要因となって天草の地におけるキリシタン弾圧はますます厳しくなります。

生き残ったキリシタンたちは隣人さえも密通者であるのを疑い、キリシタンを隠してひっそりとした暮らしを余儀なくされました。

もしもキリシタンであるのがわかわれば拷問や処刑が待っています。美しい天草の海に沈められた信者たちもいたそうです。

それでも彼らは宗教を捨てませんでした。かつて、祖先を病院で救ってくれた神父たちから教わった信仰を頑なに守ったのです。

”きびなご”などの海の幸が味わえるのも天草の魅力です


天草には温泉もあります。天草下田温泉には共同温泉施設もあります


美しい天草の夕陽。弾圧時代の”隠れキリシタン”にとって唯一の慰めだったかもしれません
東京二六新聞に『五足の靴』と題された九州の紀行文の連載が始まったのは、もう100年余り昔のことです。

詩人の与謝野鉄幹、北原白秋ら5人の詩人たちが交互に執筆を担当しました。

彼らはその旅で大江をめざしています。ガルニエ神父を訪ねるのが目的でした。

彼らは天草の地を旅し、キリシタンたちの昔に想像を馳せ、ガルニエ神父に会ってさまざまな話をしました。

のちの日本文学界に「南蛮文学」と呼ばれる新ジャンルを築いた彼らですから、天草の旅とガルニエ神父との交流は大きな経験になったに違いありません。

さて、今回のスピリチュアガイドで紹介した天草ですが、それは「〇〇神社を訪ねる」といったものではありません。

天草の島全体から、450年前に渡来した神父の面影、島民たちの厚い信仰が感じられるのです。
それらは昔を知れば知るほど旅人の心を刺激します。

きっと、多くの人々の執念ともいえる一途な想いと、パワーを感じる旅になるでしょう。

天草は夕陽の美しい島でもあります。キリスト教が入る前も、キリスト教が栄えた時代も、弾圧されての苦しい時代も、そしてキリスト教が復活して以降も…。

この島の人々は美しい夕陽を眺めながら、明日の希望を見出していたに違いありません。

●天草宝島観光協会
非常に楽しい観光紹介ページで、開けるだけで天草を観光した気分になります。
http://www.t-island.jp/
< PROFILE >
遠藤 里佳子
旅行雑誌ライター。国内外の旅を多く取材。全都道府県を制覇(通過ではなく宿泊をしてカウント)したのは32歳のとき。ハワイやカナダ、オーストラリア、東南アジア、中国など太平洋圏に詳しい。
  • スポット特集
  • B級グルメ特集
  • オートキャンプ特集
  • レジャー&リゾート特集
  • ロケ地特集
  • 絶景特集
  • 子供といっしょにお出かけ特集
  • 特産品・名産品特集
  • 温泉・スパ特集